ベトナム進出時に知っておきたい外資規制のポイント
ベトナム進出を検討中の外国投資家の皆さまへ。
外資規制は、ベトナムで事業を始める上で必ず理解しておくべき重要ポイントです。
本記事では、投資禁止分野・条件付分野・持株比率制限など、外資企業に適用される主要な規制と実務対応の流れを、ベトナム法に精通した弁護士が分かりやすく解説します。
進出計画を立てる前に必ずご確認ください。
Category: ベトナム進出・設立手続
Tag:#外資規制, 投資法, BCC, LLC, 持株比率, ベトナム進出, IRC, M&A, 投資スキーム, 進出手続
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📑 目次
- ベトナム政府が外資に制限を設ける背景
- 投資する事業目的の選定と外資規制チェック
2.1 投資・経営が禁止される分野
2.2 条件付投資・経営分野(要件あり)
2.3 CPCコード/VSICコードの確認 - 外資企業に課される制限の種類
3.1 持株比率(定款資本金の保有率)制限
3.2 投資形態に関する制限
3.3 事業活動範囲(地理・業務)の制限
3.4 投資家の能力・経験に関する要件
3.5 その他、個別法で求められる条件
ポイント:
ベトナムでは、外国投資は原則“事前許可制”(IRCやM&A承認)で、地域ごとに運用差が出ることもあるため、法令+ローカルルールを両方確認することが重要です。
01|ベトナム政府が外資に制限を設ける背景
ベトナムは社会主義指向の市場経済を採用。市場メカニズムを活用しつつ、国家目標に沿うよう投資活動を審査・管理します。主な審査観点は:
- 国家の発展目標・産業方針に合致しているか
- 治安・国防上の安全性が確保されるか
- 持続可能性・環境保護の観点で適切か
- 国家資産(とくに土地使用権)の有効・正当な利用か
あわせて、環境汚染・租税回避・旧式技術流入などの負の影響を防ぎ、国内企業を保護する狙いもあります。
02|投資する事業目的の選定と外資規制チェック
最初の論点は**「ベトナムで何をやるか」**。事業が固まったら、以下の順で規制適合性を確認します。
2.1 投資・経営が禁止される分野
現行投資法(No.61/2020/QH14)に基づく禁止例(抜粋):
- 麻薬関連(附属書1 等)
- 特定化学物質・鉱物関連(附属書2)※日系が特に留意
- 絶滅危惧野生動植物の標本取引(CITES等)
- 売春/人身売買/人体・胎児の売買
- 人の無性生殖に関する活動
- 爆竹販売
- 債権回収業(取立て)※日系が特に留意
2.2 条件付投資・経営分野(要件あり)
政令31/2021/ND-CPが条件付分野リストを規定。
→ 許認可・資格・資本金要件など、事前に充足が必要。
2.3 CPCコード/VSICコードの確認
- CPC:国連のサービス分類。WTOコミットメントで対外開放条件と紐づく。
- VSIC:ベトナムの産業分類。**ERC(企業登録)**での事業登録に必須。
実務フローのコツ:
- 事業をCPCで特定 → WTOコミットメント/日越投資協定の開放条件を確認
- VSICを選定 → ERC登録用の事業目的を具体化
- 未開放分野や曖昧なケースは個別協議・個別承認を想定(例:リネンサプライ等)
03|外資企業に課される制限の種類
外資に対する主な制限は次の通りです。
- 持株比率(定款資本金の保有率)
- 投資形態(設立/M&A/BCC など)
- 事業活動の範囲(できる業務・地域)
- 投資家の能力・経験(財務・実績)
- 個別法で求められるその他要件
3.1 持株比率(定款資本金の保有率)制限
代表例(分野により異なる):
- 100%外資可:IT、コンサル、不動産開発・不動産サービス など
- 49%上限:国内海運・鉄道・エンタメ など
- 51%以下(合弁):農業・林業サービス など
- 合弁必須(下限規定は柔軟):広告 等
同じ「不動産」でも、開発・売買と仲介・管理で扱いが異なることあり。必ず細目で確認。
3.2 投資形態に関する制限
投資法上の基本形:
- ① 現地拠点の設立(法人/支店/駐在員事務所)
- ② 追加出資・持分/株式購入(M&A)
- ③ 投資プロジェクトの実施
- ④ BCC(事業協力契約)
- ⑤ 特別投資形態(政府規定)
実務では①②の選択が中心。支店は許可業種が極めて限定的。
法人設立が難しい場合の代替として④BCCを選ぶケースも。
3.3 事業活動範囲(地理・業務)の制限
- 特別法で外資が実施できる業務の範囲を限定(例:貨物レンタルは外資に厳しめ)
- 地理的制限もあり:国防・治安上の重要地域では外資の活動が制限・禁止
3.4 投資家の能力・経験に関する要件
- 財務能力の証明(直近2年の監査済FS、親会社支援誓約、金融機関保証、残高証明など)
- 当該事業の実績・経験(海外でのトラックレコード等)
→ IRCや同等証明の審査で提出・評価されます。
3.5 その他、個別法で求められる条件
- 個別ライセンス(小売、教育、人材紹介 等)
- 最低資本金・法定資本金
- 管理者・専門家・技術者の資格
- 設備・インフラの整備基準 など
※本稿は公開会社の証券取引の規制は対象外。
📝 まとめ(実務チェックリスト)
- 事業定義 → CPC → WTO/日越協定 → VSIC の順で整合性確認
- 持株比率・投資形態・活動範囲の3点は分野別の個別法で再チェック
- 地域運用差(ハノイ/ホーチミン/ダナン等)を前提にローカル実務も確認
- 曖昧・未開放分野は個別承認を想定して、タイムラインと代替案を事前設計
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