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ベトナムの会計基準(VAS)と国際会計基準(IFRS/J-GAAP)の違い【実務解説】

目次

  1. はじめに
  2. 主な違い
     2.1. 財務諸表作成の目的
     2.2. 資産の評価方法
     2.3. 収益・費用の認識基準
     2.4. 連結財務諸表の取り扱い
  3. 実務でよくある事例
  4. 日本企業への影響
  5. まとめと対応策

1. はじめに

ベトナムに進出した日系企業が最初に直面する課題の一つが、会計基準の違いです。

  • VAS(ベトナム会計基準):主に税務当局への申告を目的とした制度。
  • IFRS(国際会計基準):投資家や株主が企業の実態を正しく把握できるよう設計された制度。
  • J-GAAP(日本基準):日本企業にとって馴染みが深いが、VASとは大きく異なる点が多い。

この違いを理解しないと、「なぜベトナム子会社の数字と日本本社の数字が合わないのか?」という問題が必ず起きます。

2. 主な違い

2.1. 財務諸表作成の目的

  • VAS:税務申告を正しく行うための書類。
  • IFRS/J-GAAP:企業活動の「経済的実態」を投資家・株主に伝えるための書類。

👉 例:接待交際費が多い場合

  • VAS:法人税計算では損金不算入となり、税務上は否認。
  • IFRS:経済活動の一部として費用認識。

2.2. 資産の評価方法

  • VAS:取得原価(historical cost)が基本。再評価はほぼ認められない。
  • IFRS:公正価値(fair value)評価を重視。
  • J-GAAP:原価主義が基本だが、減損会計は適用。

👉 例:5億VNDで購入した機械

  • VAS:帳簿価額は5億VNDのまま。
  • IFRS:市場価格が下落すれば減損処理。
    → 日本本社の連結では「実際の価値を反映しない」と誤解されるリスク。

2.3. 収益・費用の認識基準

  • VAS:請求書(VATインボイス)発行時点で収益計上。
  • IFRS/J-GAAP:商品の引渡しやサービス提供時点で収益計上。

👉 例:3月に商品を納品し、4月に請求書を発行した場合

  • VAS:4月の売上。
  • IFRS/J-GAAP:3月の売上。
    → 親会社の連結において「売上が翌期にずれる」という問題が発生。

2.4. 連結財務諸表の取り扱い

  • VAS:連結財務諸表の作成義務は限定的。
  • IFRS/J-GAAP:全ての子会社・関連会社を連結対象とする。

👉 この違いのため、日本本社から「連結用データが不足している」と指摘されるケースが多い。

3. 実務でよくある事例

  • 事例1:利益の乖離
    北部の製造子会社はVAS上の利益10億VNDを計上。
    しかしIFRS換算後は、貸倒引当金を追加計上し、利益は6億VNDに減少。
    → 本社CFO「なぜ利益がこんなに違うのか?」
  • 事例2:売上計上のタイミング
    年末に商品を出荷、インボイス発行は翌年1月。
    • VAS:翌年度の売上。
    • IFRS:当年度の売上。
      → 本社が「年末の売上が急減」と誤解。

4. 日本企業への影響二重の報告が必要

  • VAS:ベトナムでの税務申告用。
  • IFRS/J-GAAP:日本本社の連結用。
  1. 誤った経営判断リスク
    VASだけを基に判断すると、実際の収益性を誤解する恐れあり。
  2. 管理コストの増加
    両基準を理解できる人材が社内に少なく、外部専門家のサポートが不可欠。

5. まとめと対応策

  • VASとIFRS/J-GAAPの違いは「技術的な会計処理」以上に、経営判断に直結する問題
  • 日系企業は以下の体制を整えることを推奨:
    • VASで税務申告 → 法令遵守。
    • IFRS/J-GAAPに変換 → 親会社報告用。

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これにより、「税務対応」と「グローバル基準での経営管理」を同時に実現できます。