ベトナム法人における資金繰り・資金移転の実務【徹底解説】
ベトナム子会社の資金繰りと日本への資金移転は、税務・外為・会計基準が複雑に絡む重要課題。配当、ロイヤリティ、役務費、利息送金の実務ポイントと注意点を事例付きでわかりやすく解説。
目次
- なぜ資金繰り・資金移転が重要なのか
- FDI企業の資金繰りに影響する要因
- ベトナムから日本への資金移転ルート
3.1. 税引後利益(配当送金)
3.2. 出資金回収・持分譲渡
3.3. サービス費用・ロイヤリティ・利息の送金 - 実務でよくあるリスクと失敗事例
- ケーススタディ
5.1. 利益は出たのに配当が送れないケース
5.2. グループサービス費が否認されたケース - 資金繰りを最適化するための解決策
- まとめ
1. なぜ資金繰り・資金移転が重要なのか
多くの日本人経営者は「会社が黒字になれば日本へ送金できる」と考えがちです。
しかし実際には:
- 配当は法人税(CIT)の納税完了・監査終了後でなければ送金できない
- サービス費やロイヤリティは契約・証憑・税務処理が揃っていないと否認される
- 外為法により、資金移転ルート・口座が厳格に規制されている
👉 正しい知識と準備がなければ、利益があっても日本へ戻せないリスクがあります。
2. FDI企業の資金繰りに影響する要因
- 会計基準の違い:VASとJ-GAAP/IFRSの差で利益認識がズレる
- 税務要因:法人税、VAT、源泉税、外形標準課税に相当する制度
- 外為管理:投資資本金口座・決済口座を経由しない送金は禁止
- 取引慣習:売掛金回収が遅い、在庫過多になりやすい
3. ベトナムから日本への資金移転ルート
3.1. 税引後利益(配当送金)
- 法人税申告と監査終了後、配当金として送金可能
- 株主総会/社員総会の決議が必要
- 違法な中間配当は課税リスクが高い
3.2. 出資金回収・持分譲渡
- 出資持分を譲渡した場合 → 投資登録証明書の変更・税務申告が必要
- 送金には銀行報告義務あり
3.3. サービス費用・ロイヤリティ・利息の送金
- サービス費用:契約・成果物・請求書・税務処理が揃わないと認められない
- ロイヤリティ:ライセンス登録が必要、源泉税課税対象
- 利息:Thin-capitalization規制あり(過度の借入は損金不算入)
4. 実務でよくあるリスクと失敗事例
- 配当送金が遅れる(監査未了、未納税)
- グループ内サービス費用が「実態なし」と否認される
- ロイヤリティ契約未登録で送金差止め
- 外為法違反による行政罰
5. ケーススタディ
5.1. 利益は出たのに配当が送れないケース
ある日系製造業は、年間で大きな黒字を計上。
しかし監査が完了せず法人税申告も遅延したため、親会社への配当送金が翌年秋まで遅れた。
👉 教訓:利益=即配当ではない。税務・監査スケジュールを考慮した資金計画が必須。
5.2. グループサービス費が否認されたケース
ある商社は親会社に「経営指導料」として年間数十万ドルを送金。
しかし契約内容が曖昧で、成果物も十分に説明できず、税務調査で損金否認 → CIT追徴課税を受けた。
👉 教訓:サービス費は「契約+成果物+請求書」の三点セットを整備すべき。
6. 資金繰りを最適化するための解決策
- 日越二言語の資金繰り表を作成し、親会社と共有
- 税務・会計・外為を統合管理(別々に処理すると不整合が起こりやすい)
- ベンチマークや事例を活用し、適正価格を証明
- 事前相談:銀行・監査法人・税務顧問に早めに確認
7. まとめ
資金繰り・資金移転は「会計・税務・外為管理」が複雑に絡み合う領域です。
黒字でも送金できない、費用が否認される、といったリスクは日常的に発生します。
「利益が出たのに日本へ送金できない…」そんな悩みを防ぐために。
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