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日本親会社向け連結決算に対応するための実務ポイント


ベトナム子会社が日本親会社に提出する連結決算資料。単に「利益を送金する」だけでは不十分であり、J-GAAP/IFRSに基づく報告対応が不可欠です。本記事では、基礎から実務フロー、注意点までわかりやすく解説します。


目次

  1. よくある誤解:「利益を送金すれば十分」ではない
  2. 連結決算とは? ベトナムでの税務報告との違い
  3. 誤った対応・未対応によるリスク
  4. VASとJ-GAAP/IFRSの主な違い
  5. 正しい連結対応のための7ステップ
  6. 親会社がよく要求する資料一式
  7. タイムライン例:T-5からT+10までの流れ
  8. まとめと行動の提案

1. よくある誤解:「利益を送金すれば十分」ではない

  • 多くの駐在員や経営者は「子会社が利益を出して日本に送金すればOK」と考えがちです。
  • 実際には、親会社は 連結財務諸表 を株主・取引所・監査人に提出するため、単なる利益金額では不十分です。
  • 連結決算には B/S、P/L、C/F、注記、内部取引消去、会計方針の統一 が不可欠です。

2. 連結決算とは? ベトナムでの税務報告との違い

  • ベトナムの税務報告:目的はベトナム税法・VASに従い、納税を行うこと。
  • 日本向け連結決算:目的は、子会社を含むグループ全体の財務状態を明らかにすること。J-GAAPやIFRS基準に基づき調整が必要。

👉 よって、「税務申告=連結対応」ではありません。両者は全く異なるロジックです。

3. 誤った対応・未対応によるリスク

  • 提出遅延:親会社全体の連結スケジュールが遅れ、開示リスクが生じる。
  • 監査上の問題:監査法人から「限定意見・不適正意見」を受ける可能性。
  • 社内評価低下:本社からの信頼を失い、予算承認や追加投資が難しくなる。
  • 利益送金も制限:必要な連結資料が揃わないと、親会社が配当決議を先延ばしにするケースも。

4. VASとJ-GAAP/IFRSの主な違い

  • 減価償却:VASは定額法中心、日本基準は定率法も広く採用。
  • 引当金:VASは限定的、日本基準は貸倒・退職給付・減損等を広く要求。
  • リース会計:IFRS16では資産・負債計上必須、VASでは未対応。
  • 収益認識:IFRSは5ステップモデル、VASより厳格。
  • 為替換算:レート適用のタイミングが異なり、資本や利益にズレが生じやすい。

5. 正しい連結対応のための7ステップ

  1. 親会社と方針・フォーマットを事前に統一。
  2. 勘定科目表をVAS→J-GAAP/IFRSにマッピング。
  3. 月次ベースで主要項目のミニ調整(減価償却、リース、為替差額)。
  4. 月次で内部取引を照合し、期末の差異を回避。
  5. 自動出力できる標準ファイル(B/S、P/L、C/F)を整備。
  6. 調整内容を文書化し、親会社に説明可能にする。
  7. 決算前にリハーサルを行い、締め処理の不一致を防止。

6. 親会社がよく要求する資料一式

  • Trial Balance(原始残高試算表+調整表)
  • B/S・P/L・C/F(グループ指定フォーマット)
  • 固定資産・引当金・借入金のロールフォワード
  • 売掛・買掛のエイジングリスト
  • 在庫一覧(入出庫明細含む)
  • 内部取引の照合作業(双方確認済み)
  • 重要な会計方針や調整内容の注記

7. タイムライン例:T-5からT+10までの流れ

  • T-5:主要取引を一時締め、証憑を確認。
  • T+1〜2:VASベースで試算表を締める。
  • T+3:J-GAAP/IFRSへの調整仕訳を反映。
  • T+4:内部取引を完全照合、差異を修正。
  • T+5:親会社へ連結用パッケージ提出。
  • T+7〜10:フィードバックを反映、最終版確定。

8. まとめと行動の提案

  • 「利益送金=十分」という考えは誤り。連結対応はグループ全体の信頼性確保に不可欠。
  • VASとJ-GAAP/IFRSのギャップを理解し、早めにマッピング・調整体制を作ることが重要。
  • 期末直前ではなく、毎月小さな変換・調整を繰り返すことが、スムーズな連結対応の鍵。

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